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加東 岳史。 最近、涙もろくなった乙女座O型。 素敵なLove Storyを皆様にお届けします。 何をやっている人かと言うと、(1)役者 (2)脚本家 (3)演出家 (4)劇団代表 (5)小説家 (6)DJ (7)秘密 と、イロイロな顔を持ってます。
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第2話 マイの事(1)

アタシの彼氏、楢崎陸は人から見たらマジメな好青年、らしい。

大学を卒業して某一流広告代理店に内定が取れたけど、お父さんが脳性マヒで倒れたので、内定を蹴って実家の花屋を継いで二代目になり、二代目になったのをキッカケに店の名前を「楢崎生花店」から「quatre saisons」に変更、オシャレでお茶も飲める店に変えて売り上げを伸ばす…
って言うけど、アタシから見たら別に陸はたいした事無い男。
人の前ではかっこいい事言ってるけど、アタシの前では変に甘えてくるし。
それがうっとおしいからアタシは邪険に扱うんだけど、アタシにキツイ事言われたり、バカにされると陸はニヤニヤ喜んだ顔する。
「キモイからニヤニヤすんな」って言うと「別にニヤニヤなんてしてないよ」なんて言い出す。
確かに陸は人前ではハッキリ物を言うし、何と言うか、有無を言わさず事を進める。
大体そうやって陸が進めた物事ってうまい方向に進むんだけど、それはアイツが辻褄合わせが上手なだけなのだ。
陸をよく見ていればわかると思うんだけど、陸が決めた物事が予想通りに進まなくなりそうになると、あいつは着地点をばれないようにずらす。

ここだけの話、あいつは家を継ぐときに最初は花屋を廃業して、カフェにしようとしてた。
でも親父さんやお袋さんの反対、それまで培ってきた花屋のツテなんかを活かすことを考えて「美味しいお茶も飲めるオシャレなお花屋さん」に見事に方向転換した。
結果としてそれは成功して、最近では女性誌の取材が来たりして売り上げは上向きだ。
でも本来やりたかった事とは違う形になったって事実は陸の中にたしかにあって、表向きはしてやったり、みたいな顔してるけど内心穏やかじゃないし、出来上がったものを
「これが本来俺のやりたかった事だ」
って自分に言い聞かせて無理やり納得させてる。
そのしわ寄せがアタシに来る、キレるわけでもなく、甘えてくるのだ。

アタシはいっつも陸と一緒にいるし、アイツの考えてる事だってほとんどわかる。
陸以外の人間がアタシを見ることができないのを解ってて、アイツは無理してる自分をアタシに見せ付ける。
それで陸は「凄く頑張ってる自分」を「自分の事をわかってくれてるマイ」にほめてもらいたいのだ。
でもアタシは陸をほめる事なんてない。
アタシは陸が、ほめられるより「バッカじゃねえの?」って言われるほうが嬉しいのを知ってるから。
生まれたときからそういう風な自分だったから。
それは陸がアタシを生み出した時にそういう風に願ったからなんだろうけど、正直アタシは自分が自分でアホらしくなるときがある。

確かにアタシは陸の妄想の一部だけど、ここの所のアタシは妄想である事が面白く無くなってきてる。
妄想は妄想らしくご主人様の望む自分でいればいいんだろうけど、どうやらアタシの生み出されたプロセスはもうちっと複雑らしい。

陸がアタシに望んだのは「素直になれなくて、自分のいう事を聞かない彼女」みたいな事らしい。
ここ1年ちょっと陸と「妄想の彼女とその彼氏」、という共同生活を送ってきて、どうやらアタシは「自分のいう事を聞かないツンデレ彼女」という自分の設定にも反発したくなってきた。

だってアタシは一応彼女だよ?いつまでたっても彼氏に反発ばっかりして、文句しか言えない、仕事で疲れているアイツに「お疲れ様」の一言も言えないのって、それは彼女としてどうなの?
なんて事を日々堂々巡りで考えてると、妄想としての自分のアイデンティティが崩壊しそうで怖くなる。
あれ?妄想なのにアイデンティティを求めるあたりがおかしいのか?
なんかよくわからなくなってきた。

今日も今日とて陸のベット上でクッション抱きながらそんな事考えてたら、陸が急に声をかけてきた。
「なぁマイ、明日俺昼過ぎに一回店抜けるから、付き合ってくれないか?」
「んだよ、そりゃ来いって言われりゃどこだっていくけど、どこ?」
「親父の所」
「…病院?」
陸は今まで一度もアタシを親父さんの病院に連れて行こうと(正しくは呼び出さない、だ)
しなかった、それがどうしたんだろう?
「別にいいけど、どうしたんだよ?」
「んー、特に意味は無いけど」
「変なの、わかったよ」

特に意味が無いわけない、頭をガリガリかいてるのは陸が困ってる時の癖なんだから。


To be continued…




2008年05月20日 10:00 │Comments(0)TrackBack(0)マイの事

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