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加東 岳史。 最近、涙もろくなった乙女座O型。 素敵なLove Storyを皆様にお届けします。 何をやっている人かと言うと、(1)役者 (2)脚本家 (3)演出家 (4)劇団代表 (5)小説家 (6)DJ (7)秘密 と、イロイロな顔を持ってます。
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第8話 ミカの事(2)

「おーい、恵一!来たぞ!」
大吾が大声でドアを叩いている。
コーポ高橋の二階の一番奥、208号室の扉には簡素なメモ紙に「川村」とだけマジックで書かれて押しピンで止められている。
「おかしいなぁ、あいつが自分の部屋を指定したのにいねえのかよ」
「待ち合わせ時間がずれてるとかないの?」
「あぁ、まぁ確かに待ち合わせの時間より30分早いけどさ」
「じゃあ、どっか出ててもおかしくないじゃない、コンビニとか買出しに行ってるかも」
大吾はうーんとか唸りながら、またドアをどんどん叩き出した。

大体、駅に付いた段階でメールなり電話なりしておけばいいのだ。
しかし、大吾曰く今日会いに来た親友の川村恵一くんは、社会人として情報社会に生きている認識に欠けているらしい。
「恵一にメールとか出しても帰ってくるのは3日後とかザラだよ、携帯を携帯しない事だってしょっちゅうだし」
「それって不便ね、でも仕事ってSEなんでしょ?」
「ああ、だから良く働けるよなって思うんだよな、取引先とかと打ち合わせするのとかって苦痛なんじゃねえのかな」
「そう思うのはキミが今自分の仕事がしんどいからでしょ?」
「んなことねえよ、楽しくやらせてもらってますぜ」
「嘘吐き」
言いながらもドアノブをひねってみた大吾が視界から消えた。

厳密には消えたのではなかった、ドアノブをひねった大吾はそのまま開いたドアに体重を預けてしまったため、部屋の中に倒れたのだ。
派手な音を鳴らして転んだ大吾は面食らったような顔をした。
「マジか…ドア開いてるじゃねえかよ、恵一…恵一!」
それでも部屋の中から家主の声はしない、夏の夕暮れを告げる蝉の声と部屋に差し込む夕日の光の筋が数本見えるだけだ。
「やっぱりお留守みたいね」
「出かけてるのに部屋の鍵開けっ放しかよ、信じられねえな」
言いながらも大吾は勝手に部屋の中にあがっていく。
「勝手にお邪魔しますよ…っと、おい、お前も入れよ」
「入れよって、キミさぁ、そういう所いいかげんだよね」
「場所指定して俺ら呼び出したのは恵一だぜ?
それにあいつとは大学のときからの親友だからな、全然問題ないって」
「そうだよね、三浪して入った大学の数少ない友達だもんね」
「それを言われると耳が痛いなぁ…」
あえて意地悪を言ってみた、私にはそんな思い出も分かち合える友達も居ない。
大吾はいつも私と一緒に居るけど、それはあくまでも彼氏として、私の宿主としての大吾であって、友達では無い、言い方を変えれば私は「他人」が欲しいんだ。
パーソナルな自分を客観的に見てくれる他人が欲しい、私は最近ずっとその事を考えてしまう。

平井大吾は私の彼氏
平井大吾は私の宿主
平井大吾の妄想の私

私は何なんだろう?私は誰なんだろう?


To be continued…